■レポート:みんなの学習会「まちの仕事、どこまで自分たちでやる!?逆分権でみえてくる、自治体の未来 」

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8月21日、2026年から始まった第34次地方制度調査会委員も務められ、日本のこれからの行政の形についての、まさにフロントラインでの議論にも携わる、東京都立大学の伊藤正次先生をお迎えし、逆分権について考える学習会を開催しました。

今回は初めての試みとして、リアルとオンラインのハイブリット方式での開催。
後日配信する動画の視聴者も含め、全国各地の自治体職員や地方議会議員、地域おこし協力隊員や自治会長、民間企業にお勤めの方など、
多様な参加者が集まり、日本各地の自治体が抱える差し迫った課題についてじっくり考えることができました。

 

今回のテーマは、学問分野でいうと「行政学」のお話。公務員試験を受けた方なら多少なりかじったことがあるかもしれませんが、いったん公務員という職についてしまうと、あらためて体系立てて、また最新事情を俯瞰的に見て考えるということは、行政改革の担当者でもない限り、実はあまりなかったりします。
今回は、そうした立場の参加者にとっても、またそうでない人にとっても、地方自治体の置かれた状況をまず冷静に見つめてみる上でとても貴重な機会になったと思います。

 

 

講義では、まず日本の行政が、ヨーロッパ大陸型の「融合型」の特徴をもち、諸外国に比べてもたくさんの仕事を地方が担っているという、総合行政主体としての実態について確認しました。
その上で、これまで取り組まれてきた市町村合併や、地方分権改革の歩みがどのようなものだったかを振り返りました。

地方分権については、機関委任事務の廃止などが中心となった1995年からの第一次分権改革、国による義務付け・枠付けの見直しなどが中心となった2007年からの第二次分権改革といったフェーズを経て、現在では提案募集方式で、国に対して個別の自治体からの提案を受け付け、権限移譲やさらなる義務付け・枠付けの見直しを進め、自治体の自由度を拡充しているといった状況にあります。

一方で、2010年に合併推進運動が終了し、また人口もますます減少局面に入ってからは、単独の自治体が限られたリソースを背景に、すべての行政サービスを提供するのには限界がある、という現場からの声が顕著になってきました。
(たしかに、市町村や県の自治体職員として働いていると、1つ1つの仕事の中で、「もう今が限界、これ以上は到底やり切れなくなる」と感じる場面に出くわしたことがある人も少なくない(むしろ日々痛切に感じている)のではないでしょうか。)

 

こうした状況を背景に、現在では制度的な取組みとして、中心市と近隣市町村との連携に基づいて圏域レベルでサービスを提供する、「定住自立圏」(2009年~)や「連携中枢都市圏」(2014年~)などが進められているということです。
(たとえは、千葉県内では、館山市と南房総市が協定を結んでタッグを組み、安房地域の地域医療や子育て支援、公共交通などさまざまな分野で連携した取組みを進めていますね。参考:館山市・南房総市定住自立圏構想)

では、2020年代以降、まさに「今」、そしてこれからはどのような取組みが進められていくのでしょうか。
ただ、これは一筋縄ではいかない、というのが実情のようです。
たとえば、2018年~2020年まで開催された第32次地方制度調査会では、圏域を制度化してしまう検討が行われたそうですが、市町村関係者等の反発で頓挫してしまった経緯があるそうです…
とは言っても、現場の待ったなしの状況やコロナ禍や大規模災害といった昨今の状況も踏まえ、逆分権に通じる、現在取り組まれている3つの方向性・トレンドについて解説がありました。

  • 1つ目は「危機への対応」(例:大規模災害時に国の補充的指示権が地方自治法で定められたことなど)、
  • 2つ目は「デジタル化・DX」(例:地方自治体の情報システムの標準化など)、
  • 3つ目は「地方自治体の負担軽減と事務の返上」(例:地方分権改革で移譲された事務権限を、市町村から都道府県に返上するなど)。
    (詳しくは動画で配信していますので、そちらをご覧ください!→動画視聴申込はこちらから)

意見交換・質問タイム(その後の懇親会も含め)では、まさに逆分権を含め、自治体の今後について切り込む様々なテーマが出されました。
「DXを進めると、住民側がサービスを利用するための時間的・費用的コストを追わされるのでは!?」
「そもそも日本では住民側が行政に高水準の行政サービスを求めすぎ!?」
「国は正直なところ地方自治体のあり方をどうしたいの?」
「海外では逆分権って起こっているの?」
「専門的な業務に対応できるよう、異動が頻繁に起こる自治体の人事制度を変える必要があるのでは?」…

リアルに差し迫った自治体現場の課題解決に向けて、逆分権のターニングポイントはいつになるのか?
伊藤先生がおっしゃるところでは、政府の議論の背景なども踏まえると、団塊ジュニアが高齢者になる2040年代が大きな節目になるとのこと。
国が全国的に一律の方針を定めて大きくドライブしていくことが、全国で見ていくと自治体の意見も多様であり難しい可能性も踏まえると、各自治体現場から、自治体間の連携方法や各業務の効率的な運営方法について、事例や経験値を細かに積み上げ、横展開したり、必要に応じて制度化に向けてボトムアップで国に提言していったりすることが必要なのかもしれません。

6時の公共も、引き続きこのテーマに強い関心をもって、各現場で取り組めるアイデア発想などに貢献していければと考えます。
伊藤先生、ありがとうございました!

(今回の学習会の様子は⭐オンラインコミュニティ(講義動画の有料アーカイブ配信)にて配信中です。参加方法については、「6時の公共」ホームページをご覧ください。)

【参加者からの声(抜粋)】

  • 基礎自治体の大変さ(特に小さい自治体)。
  • 市町村に下りてきた事務を都道府県に戻す動きがあることをそもそも初めて知った。
  • 事務量の洗い出しと必要なサービスレベル、期待値調整が必須であると思った。
  • マンパワー不足となっている役所のヒントとなりました。提案募集方式のことは知らなかったため、活用の可能性を感じました。
  • 地方議会議員の立場としては、新しい取組みを求めたりして、むしろ行政の仕事を増やしてしまいがちな側なので複雑な気持ち。少なくとも自治体ごとでできる業務効率化は積極的にすすめ、ここはしっかりやるべきというところはメリハリをもって提言していきたいです。
  • 行政の区切り、市町村…、かなりあいまいなものになってくると感じました。普段、自治体で働いていると、目の前の業務で手一杯ですが、あらためて、行政システムが、国・県・市町村で一体のものだとわかりました。DXの可能性を感じました。
  • 自治体発で逆分権事例を積み上げるにはどうしたらいいか。県政主導で進める推進チームを知事号令でつくり、市町村と調整して進められないか。
  • もっと民間を使ってもらう(民間でやれることが増えていく)といいのにという気持ちです。
  • 今後、人口減少が進む中では、市民が自治体運営に加わらざるを得ないと思います。逆分権の先には、そんな姿をよりリアルに描くことが必要と感じました。

🍺オフショット🍺

幼少時代の伊藤先生の千葉の思い出話をうかがいました。

最近はずっと書き物でお忙しくされているとのことですが、ぜひまた息抜きに千葉にお越しください!

 

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